- 「SaaS」とは、Software as a Serviceの略語、「サービスとしてのソフトウェア」という意味で、「サース」あるいは「サーズ」と発音されます。
「SaaS」が、一般的なソフトウェアと何が違うのかをまずは説明しましょう。一般的なソフトウェアは、ソフトウェアのパッケージを購入し、これを自分のパソコンにインストールして使用します。
みなさんのパソコンにインストールされている「ワード」や「エクセル」(「Microsoft Office」)がその代表例です。「SaaS」の場合は、インターネット経由で、その都度必要な機能だけをサービス提供元から入手し、利用した機能に応じた料金を支払う、オンデマンド型のソフトウェアサービスです。
ケーブルテレビで、見たい番組だけ料金を払って視聴する(ペイ・パー・ビュー)というスタイルに似ていますね。例えば「ワード」は非常に高機能な文書作成ソフトウェアですが、その全ての機能を利用しているユーザはそれほど多くないでしょう。
しかし、購入する場合は、全ての機能が揃ったパッケージしか用意されていませんので、結果的に購入者は使わない機能の分の費用も支払っていることになります。
これが「SaaS」であれば、使った分の費用だけを支払うわけですから、導入に必要なコストを低減できるわけです。
さらに、ソフトウェアの更新やバグの修正など、面倒な作業はサービスの提供側が行うので、ユーザは何もせずに最新状態にアップデートされたソフトウェアを利用できるという安心感もあります。一方、提供側としては「SaaS」はインストールするタイプのソフトウェアとは異なり、利用状況をその都度確認することができますので、ユーザの実際の行動からどのようなニーズがあるのかを知ることができます。
大規模なシステム構築が不要なので、現在、「SaaS」 は企業向けの顧客管理システムなどにおいて利用が拡大しています。
さらにはGoogleが「ワード」や「エクセル」のような文書作成と表計算のソフトウェアを「Google Apps」という名前で提供するようになりましたので、今後は個人での利用も進むものと考えられています。では、この「SaaS」をどのように医薬品マーケティングに活用できるでしょうか?
会員制ウェブサイトなどで、画像診断のソフトウェアや栄養価計算のソフトウェアといったものを「SaaS」として、提供することが考えられます。
利用者である医師はウェブサイトにアクセスするだけで、そのソフトウェアを無料で利用することができます。
一方、製薬企業側では、
・誰がそのソフトウェアを利用しているのか?
・利用頻度は、よく利用する機能は?など、個別の利用者が自ら蓄積する情報を知ることができます。
この情報は、医師のウェブサイト上での行動から取得したものですので、より実際的なニーズ、あるいは需要といった「生のマーケティング情報源」であると言えるでしょう。
通常のニーズ調査は、アンケート等を取る形で実施しますが、回答していただけない場合も多いのが現状ですから、「多数のニーズ」が吸い上げられているかどうかは疑問が残ります。
しかし、「SaaS」の使用履歴を取得するということは、「実際の行動」をウオッチすることになりますから、この「生のマーケティング情報源」をもとに、より精読いただけるコンテンツや機能の提供が行える可能性が高まります。
もう一つの活用法として、MRのディテーリングに使用する学術資材の提供なども考えられます。
今後、ますますインターネットの接続スピードが高速化するため、サイズの大きなデータでもストレスなくやり取りすることができます。
そうなれば、精細な画像や動画であっても、「SaaS」を活用することで、MRがノートパソコンからそれらデータを呼び出し、目の前のドクターに見せることができるのです。CD-ROMやDVDなら、データの更新ごとに新しいものを配布する必要がありますが、「SaaS」を使えば、コンテンツ、ソフトウェア双方とも一元管理し、最新の状態を維持することが可能です。
医薬品のウェブマーケティングの新たな方法として、「SaaS」の提供を検討されてはいかがでしょうか。