さて、今回は、過去からのマーケティングのトレンドについて、フィリップ・コトラー博士のマーケティング理論を、医薬品マーケティングの理論に照らし合わせて考えてみます。
コトラー博士と言えば、マーケティングの神様とも呼ばれる近代マーケティング理論を体系化した方です。
そのコトラー博士が提唱している理論が『マーケティング4.0』。
マーケティング4.0は、同じタイトルで書籍にもなっていますが、今回は、マーケティング4.0について。
コトラー博士は、書籍の中でマーケティングが2010年以降、4.0の時代に入ったと論じています。
では、1.0から4.0に、向かってマーケティングはどう変化したのでしょうか?
1)マーケティング1.0は「製品中心」
1950年代から1970年代にかけてアメリカで生まれた製品中心のマーケティングです。
当時は、需要>供給の時代でコストを抑えて品質の高いものを作れば売れた時代です。
また、配荷するための流通網の整備・拡大を重視した時代です。
医療用医薬品の業界では、おそらく「マーケティング」という言葉もあまり使われなかった時代です。
医薬品の種類も今ほど多くはなく、MRも「プロパー」と呼ばれていた時代です。
2)マーケティング2.0は「顧客志向」
1980年代から1990年代前半は、「差別化」や「顧客志向」が唱えられた時代です。
この時代のキーワードは、STPと差別化です。
市場をセグメント化し、そこにターゲットセグメントを見つけ、製品ポジショニングを明確にして他製品との違いを訴求します。
顧客は、自分にとって必要なもの、最適なものを選べるようになったのです。
1980年代になると、外資系の製薬企業では、医薬品マーケティングやSTPといった言葉がよく使われるようになってきました。
また、医薬品マーケティングの研修を提供する会社や書籍などもこの年代に多く登場しています。
3)マーケティング3.0は、「価値主導」
1990年代半ばから2000年代のマーケティングでは、製品やサービスの「機能面」での差は小さくなり、それの差別化が難しい時代になりました。
そのため、企業が打ち出す理念や使命などの「社会に提供する価値」が、マーケティングで重要になってきたのです。
また、インターネットが普及し顧客は企業から発信する情報だけでなく、さまざまなステークホルダーが発信する情報に簡単にアクセスできる時代となりました。
また、多くの企業が「ホームページ」を持つようになりました。
そのため、商品の機能だけでなく会社の考え方や価値を知ることができる時代になってきたのです。
医薬品マーケティングでも、ウェブマーケティングやDTCマーケティングの実施、疾患啓発サイトの開設が活発になってきました。
4)マーケティング4.0は、「自己実現」
そして、2010年以降のマーケティングは、顧客の自己実現にまで踏み込むことが必要だと唱えられています。
「機能が優れているから買う」「この企業が好きだから買う」を超えて、より高い次元で顧客の「求める自分になれるかどうか」に対してまで踏み込むマーケティングです。
これを行うことで、企業やブランドの「推奨者」を増やすことがKPIになります。
医薬品マーケティングでは、医薬品情報だけではなく医師の求める「自分」を実現させるための支援が大切になります。
デジタルの時代ですが、マーケティング部門やMRがそんな医師の「自己実現」にまで踏み込めるかどうかがカギになりそうです。
SNSが活発化した現在こそ、医師の深いニーズにまで踏み込む活動が重要になってくるのではないでしょうか?
このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。