今回は「広告の5M」を取り上げます。
マーケッティングの大家 P・コトラー博士によると、広告とは「スポンサー名を明からかにして、有料で行う製品やサービスの非人的プレゼンテーション」と定義されます。そして、広告プログラムを立案する際に検討し、決めておくべき5つの要素があると説いています。
それが「広告の5M」で、目的(Mission)・メッセージ(Message)・媒体(Media)・予算(Money)・評価(Measurement)の5つです。
それぞれのポイントは以下の通りです。
1)広告の目的の決定
広告の目的は「情報提供」「説得・リマインド」「購買意思決定の強化」の3つで、それに合わせて広告のタイプが「情報提供型広告」「説得型広告」「強化(リマインダー)型広告」の3つに分かれます。競合状況、市場環境、自社の製品のおかれた状況によって目的が異なるので、3つを使い分けることが求められます。
新たなカテゴリーの製品が発売される際は、まず、カテゴリーや製品の特徴、機能や規格を伝える「情報提供型広告」がよく使われます。また、ベネフィットを伝えるためにも「情報提供型広告」も多く使われます。
次いで、カテゴリー内での競争が起こるようになってくれば、自社のブランドを選んでもらえることが必要です。つまり、選択的需要を喚起することが主な広告目的となります。そのため「説得型広告」が有効です。
最後に、製品の成熟期に至ると、消費者に自社のブランドを記憶に留めていてもらう必要があります。そのため「リマインダー型広告」が有効です。
また、自社ブランドのユーザーには、自身の選択が正しいことを認識してもらうため「強化型広告」が有効です。
医薬品マーケティングにおいても同様で、製品のライフサイクルに応じた広告目的を事前に明確にしておくことが必要です。
2)広告メッセージの決定
広告メッセージ決定に際しては「メッセージの作成」「評価と選択」「発信」「社会的責任の再検討」の4つのプロセスを経ることになります。このプロセスには、自社そのものの理念やミッション、自社のブランドが提供できる価値、競合品のメッセージを分析することがプロセスに含まれています。その上で、オリジナリティあるメッセージを開発し、かつ、有効性のテストも必要となります。
●メッセージ作成
顧客の声や、特約店などの顧客に近いところにいる人の声を聞いた上で、メッセージを考える帰納法的なアプローチと、自社で製品やサービスの価値を定義して、「市場にどんな影響を与えたいか」を先に決めてしまう演繹的なアプローチがあります。
●メッセージの評価と選択
いつかの候補を、「興味深さ」「独自性」「信頼性」の観点から、アンケート等によって調査・比較し、選択するプロセスです。
●メッセージの発信
メッセージ内容だけでなく、広告のスタイル、トーン&マナー、ビジュアルといった表現方法を検討して、自社のブランドに適したものを選定するプロセスです。
●社会的責任の再検討
社会通念にあっているか?差別表現や誇大表現はないか?法規制を逸脱していないか?などをチェックするプロセスです。
このプロセスも医薬品マーケティングでも同様のプロセスが必要です。
3)広告媒体の決定
目標とする対象ターゲットへの理想的な露出を達成し、費用対効果が高い広告媒体を選ぶプロセスです。広告メッセージの「リーチ(到達範囲)」「フリークエンシー(露出頻度)」「インパクト」を調査・把握し、媒体候補を選定します。
次いで、その媒体タイプの中から最もコスト効果の高い媒体ビークルを選択します。また、季節性や景気循環、その他の自社のブランドを取り巻く要素を考慮して、スケジュールを決定します。最後に、市場規模、広告への反応度、媒体効率、競争率などを考慮した上で、予算を配分します。
4)広告予算の決定
広告予算を決定する要素も5つあり、それぞれについて検討をした上で決定することになります。
●製品ライフサイクルの段階
製品ライフサイクルが導入期であれば、認知度拡大のための予算が多く必要となりますが、成熟期以降では逆となります。
●市場シェアと顧客基盤
市場シェアが高ければ、相対的に予算は少なくてすみますが、逆ならば予算は多く必要です。
●競争とクラッター(混雑度)
競争が激しい市場、同一カテゴリーの多い市場では、予算が多く必要となります。
●広告の頻度
メッセージ浸透のために、どの程度の頻度が必要かを考えなければなりません。頻度が多くなれば、それだけ予算が多く発生します。
●製品の代替性です。
自社のブランドのコモディティ化のレベル、つまり、代替性の高さによって広告予算を決める必要があります。代替性が高い場合とは、差別化する要素が少なかったり、強みが目立たないことなので、その場合は予算が多く必要です。
●広告効果の測定
広告プログラムを成功させるために、効果測定が欠かせません。広告の効果には、大きく「コミュニケーション効果」と「売上げ効果」があります。
売上げ効果の測定は難しいといわれています。ただし、ダイレクトマーケティングでは売上効果を直接的に測定することが可能です。
コミュニケーション効果の測定では、広告メッセージが伝達できているかを調べるために、媒体に掲載する前に事前テストで認知度などを把握しておき、掲載後の事後テストでそれがどの程度変化したかを調査することで測定が可能です。
このように、広告プログラムを考える際に5Mがもれなく検討されているかが重要です。
それは、医薬品マーケティングでも同じです。
今回の5Mはポイントが整理されているので、広告プログラムのチェックリストとして十分に活用できるのではないでしょうか?