さて、今週はマーケティング系のメディアでよく目に付くようになった「ABM」を取り上げます。
ABMとは、Account Based Marketingの略です。
ターゲット企業、つまり「アカウント」を絞り込んで、戦略的にアプローチするマーケティング手法・概念のことです。
2013年頃から、マーケティングオートメーション(MA)との組み合わせで、米国の B to B企業を中心に盛んに必要性が唱えられています。
定義を聞くと、「今さらこんな概念をわざわざ唱える必要があるの?当たり前じゃないの?」と思ってしまいそうですが、米国の従来のB to Bの活動に背景があります。
というのは、米国でのB to Bマーケティングといえば、「トップへの営業」が主流で、CEOやCOO、CMOといった役職者を攻略すれば良かったのです。
米国は、日本の組織以上に、トップに意思決定の権限が集中しているので、そこさえ攻略すれば製品やサービスが導入されたからです。
しかし、まだ「アカウント」の無い企業へのトップクラスへのアプローチはそう簡単ではありませんし、顧客側のトップも、製品やサービスを提供する企業も、転職や退任すれば情報が分断されること等も課題となっていました。
そこで、
・ターゲットの絞り込み
・情報の集約と見える化
・アプローチの統合
という観点から、必要性が叫ばれたのが「ABM」なのです。
進め方のステップは、以下の通りです。
【ABMの進め方】
1.自社製品やサービスの購入可能性が高く、 購入額も高いと考えられる見込み客(アカウント)の絞り込み
2.ターゲットのアカウントの従業員と自社のコンタクト情報を集約して一元化
3.意思決定に関与する人物のリスト化
4.1~3をMAで統合して、トータルアプローチ法の設計と実行
ステップを見れば当たり前のことのですが、最近、日本でも話題となるケースが増えてきています。
日本の場合は、米国と違って、重要な情報が営業現場で俗人的に持たれていたり、各部署に点在していることが問題になっているケースが多いようです。
この問題は、MAツールを導入すれば解決することではなく、部門間で協力できる価値観や、文化の醸造がなければうまく機能しない気がします。
一方、医薬品マーケティングでも、大学病院や基幹病院などの大きな医療施設へのアプローチを考える場合にうまく活用すれば効果を発揮できそうです。
ABM自体の概念や定義は難しいものではありませんが、組織として取り組むには「考え方」や「必要性」を関係者で共有することが大切だと思います。
このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。