- 今回の用語は、ブログなどのCGMの増加に伴って利用者が拡大している「アフィリエイト」について説明します。
これはウェブサイトの広告手法のひとつで、広告主が、他社・他者のウェブサイトにリンクを掲載してもらい、そのリンクを経由して商品の購入や会員の登録があった場合に報酬を支払う広告のことを言います。
まずは実例として、当社のブックレビューのページを見ていただきましょう。
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顧客と語らえ! クイジング入門」 弘中 勝
ページの一番下に、ブックレビューで紹介した書籍と関連する書籍への「アマゾン」へのリンクが設置されています。
これが「アマゾン」が提供している「アフィリエイト」で、当社は、この場合「アフィリエイター」となります。
これにより、「アマゾン」は書籍の広告が掲載されることで、その広告をクリックした人の購入が期待でき、当社はその書籍が売れた場合に、規定のコミッションが期待できます。「アフィリエイト」では、広告主は、広告が掲載されるだけでは費用を支払う必要が無く、実際の売上があった場合にだけ報酬を支払うので、リスクが低く費用対効果の高い広告だと言えます。
一方、広告を掲載するアフィリエイターも、アクセス数やクリック数を保証する必要がありませんので、気軽に取り組むことができます。
つまり、多くのアクセスがない個人のブログや掲示板でも、リスクもなく手軽に取り組めるため、大手マスコミやポータルサイトから個人のブログまで、幅広いウェブサイトに「アフィリエイト」広告が掲載されるようになってきました。また、ブログでは、気に入ったお店や商品の紹介をおこなわれていることがよくありますが、そうした「口コミ」とあわせて「アフィリエイト」広告を掲載する、といったことがよくおこなわれています。
これは、そのブログの運営者であるアフィリエイターが、その店や商品のファン客であって、積極的に紹介することで、店や商品を応援するとともに、自分にも「報酬」を期待している行動の現れです。「アフィリエイト」広告は、こうした「口コミ」とも相性がよいので、ブログなどの個人メディアが増えれば増えるほど、拡大していくと考えられています。
ウェブサイトの広告としては、「バナー広告」もよくおこなわれていますが、こちらは掲載するウェブサイトが多くのアクセスを集めている媒体価値の高いポータルサイトなどが、広告メディアの中心となります。
一方、「アフィリエイト」は、掲載されている個々のウェブサイトのアクセスは少なくても、多くのウェブサイト(個人のブログなど)に掲載されることで、草の根的に地道にトータルの広告掲載数を増やすとともに、「販売」「資料請求」「会員登録」といったアクションを促進する方法の一つです。
では、この「アフィリエイト」をどのように医薬品マーケティングに取り入れることができるでしょうか。
一般の消費財の「アフィリエイト」広告では、多くの場合「商品の購入」が報酬の対象になりますが、医薬品マーケティングでは、この方法をとることはできません。
しかし、会員の登録やクイズなどの企画への参加を、参加者から友人・知人の医師に呼びかけてもらい、なんらかのアクション(新たに会員になる、企画に参加するなど)があった際に、報酬をお支払いするなどが考えられます。
この手法は、日経メディカルオンラインやケアネットなどが、新規会員募集のために行っていますが、製薬企業の立場からは、やりづらい方法でしょう。(*日経メディカルオンラインやケアネットは、メールで紹介を呼びかけているので、正確には「アフィリエイト」とは言えません。)今後考えられる方法としては、自分のメディアであるブログなどを持っている医師やインフルエンサー的な医師に、製薬企業のウェブサイトの記事や感想などを、「本音」で書いていただき、その上で、新規に会員登録があった場合には、何らかの報酬をお支払いするなどがありえる方法でしょうか?
こうしたことが実現できるには、従来の「広告主=製薬企業」「医師=顧客」といった関係でなく、ともに「医療発展のコラボレーションのパートナー」といった関係を構築していく必要があるでしょう。どちらかというと、「アフィリエイト」は、一般消費財の場合は、「お小遣い稼ぎ」的なイメージがありますが、やり方によっては医薬品マーケティングでも応用可能ではないでしょうか。
また、疾患啓発を一般の医療消費者におこなうウェブサイトの場合も、「アフィリエイト」の活用が考えられます。
例えば、「疾患啓発」と「クイズ」や「検定」を組み合わせた企画で、参加者に他の参加者を紹介してもらい、新たに参加者となった場合に、なんらかの報酬を支払うなどが考えられるでしょう。
直接的な「金銭」を発生させるのは無理があるので、報酬を「デジタルプレミアム」や「疾患啓発の冊子」などで提供するなどの方法であれば実現できる可能性もありそうです。「アフィリエイト」は、ブログや掲示板といった一般の消費者が生み出すメディア「CGM」にも、また情報提供をおこなっているニュースサイトやポータルサイトにも掲載が可能な広告手法です。
「アフィリエイト」自体の方法論にとらわれる必要はありませんが、自社のウェブサイトへのアクセスや会員登録を増やすための取り組みとして、こうした広告手法からヒントを得ることも可能です。
業界外で起こっている様々なマーケティング事例をどう業界内に取り込むかを考えることで、クリエイティブな発想が生まれるのではないでしょうか。