DTCマーケティングで、疾患の認知から受診に至るまでのモデルについて、今回は考えてみます。
通信販売でよく使われるモデル「AIDCA」がありますが、それ応用するとコミュニケーション戦略がうまく設計できそうです。
これは、購買プロセスモデルで紹介される「AIDMA」「AISAS」などと類似のものですが、「C」の部分が特徴的です。
商品の販売の場合
A=Attention: 認知
I=Interest: 興味
D=Desire: 願望
C=Conviction: 確信
A=Action: 購買
の略となります。
医薬品のDTCマーケティングの場合なら
A=Attention: 疾患名の理解・疾患への注意喚起
I=Interes: 自分がその病気かもしれないという関心と不安
D=Desire: 受診の必要性の認識
C=Conviction: 受診すべきとの確信
A=Action: 受診
という流れになります。
「A」のプロセスに関しては、テレビをはじめマスメディアでの実施が可能で、今では多くの製薬企業が取り組んでいます。
「I」のプロセスも「A」である程度実現できますが、疾患の内容や治療法などを説明するパブリシティや記事広告、市民公開講座などもよく活用される手法であり、より情報が深く伝わることで成果が上がります。
「D」に関しても、より詳しい疾患や治療の情報、知り合いなどへの相談、患者疾患啓発ウェブサイトのコンテンツなどで、その必要性を強く認識するようになります。
ここまで認識していても、まだ受診をためらったり、迷ったるするケースも結構あるのではないでしょうか?
1つの地域で「テレビ広告」+「新聞広告」を実施した場合と、他の地域で「新聞広告」のみを実施した場合の、事例を比較すると
●認知度は、テレビ、新聞両方実施した場合が高かった。
●受診率は、両方の地域とも同じだった。
という結果だったそうです。
長い目で見た場合には、認知度向上が効果的に働くこともありますが、受診率を「KGI」とするなら、テレビ広告の広告費は無駄だったことになります。
また、「テレビ広告」+「新聞広告」の組み合わせでも「確信」を獲得できなかったということになります。
もちろん、AIDのプロセスは「媒体の選定」「媒体の組み合わせ」「情報の露出量」などが相対的に重要な要素であることは間違いありません。
したがって、メディアを横断的に活用することで、費用対効果の高いDTC広告、DTC-PRを考えることが必要です。
一方、最後の「C」「A」のプロセスでは、多くの場合、受診促進の受け皿となる疾患啓発ウェブサイトの工夫が必要となります。
ここのプロセスが、受診してもらえるかどうかの鍵となるのです。
通信販売の場合なら、ここで必要なのは、
●体験談
●権威者による推薦
●客観的定量データ
●ランキング掲載
●無料サンプル提供・トライアル販売・返金保証
となります。
これをDTCマーケティングの疾患啓発サイトのコンテンツで考えれば
●患者さんの体験談(医師との対談等)
●KOLによる受診の必要性のコンテンツ
●放置した場合や受診が遅れた場合の予後や死亡率などのデータ
●疾患チェックシート
などが相当します。
そして、多くの疾患啓発サイトでは、こうしたコンテンツが準備されており、そこで一定数の方々が受診するようになります。
ただ、「ランキング掲載」や「無料サンプル提供」といった手段は、DTCマーケティングには使えないので、「受診の必要性の確信」してもらう率を向上させるには、別の手段を考える必要があります。
ここで考えられるのは、一度、ウェブサイトを訪問した方へのリターゲティングです。
今のウェブマーケティングでは、一度、疾患啓発サイトに来訪した方々をターゲットに、再訪を促すことや新たなコンテンツを告知することが可能です。
もう1つは、人的介入をプロセスに組み込むことです。
コールセンターなどで、疾患相談を受ける仕組みや、現在、当社が推進している調剤薬局での疾患啓発プログラムもその1つです。
この場合なら、薬剤師さんがその場にいるので、AIDCAの全プロセスを実現できる可能性もありそうです。
最近、活発になりつつあるとともに「ROI」が重視されるDTCマーケティングですが、全てのプロセスに工夫の余地がありそうです。
DTCマーケティングを展開されているプロマネの皆さんは、全体の最適化や各プロセスの評価指標を考えて見てはいかがでしょうか?