本書は、ソフィアバンク代表であり多摩大学教授も務めておられる田坂広志氏の最新刊で、タイトルのとおり、これからの資本主義になにが起こるのかについて、「WEB 2.0」による情報革命がもたらす変化を予言した書籍です。
資本主義の行方を扱う大きなテーマの本であり、これからのビジネスやマーケティングを考える上で非常に示唆に富んだ内容でボリュームがありますが、リズムの良い文章に引き込まれ一気に読めてしまいます。
医薬品マーケティングにおけるe-マーケティングやDTCマーケティング、口コミマーケティングを考える上でのヒントなども多くあり、医薬品マーケティングに携わられる方々にも、是非お読み頂きたいと思います。
目次は、次のとおりですが、大変興味深いものではないでしょうか?
序 話 これから何が起こるのか
第一話 これから「情報革命」で何が起こるのか
第二話 これから「市場」で何が起こるのか
第三話 これから「企業」に何が起こるのか
第四話 これから「ビジネス」に何が起こるのか
第五話 これから「商品」に何が起こるのか
第六話 これから「マネジメント」に何が起こるのか
第七話 これから「知識社会」で何が起こるのか
第八話 これから「資本主義」に何が起こるのか
終 話 これから「経済原理」に何が起こるのか
著者は、本書の中で75の変化を取り上げていますが、個人的に印象深かった変化や医薬品マーケティングにも影響する変化について紹介します。
・第33の変化 「利他の精神」が「最強の戦略」となる。
インターネットでの強者は、Yahoo!やGoogleなどの検索サイトであるが、「アルファブロガー」と呼ばれる消費者による「ポータルブログ」が生まれてきている。そのため、企業が発信する自社本位の情報提供は、「顧客中心市場」においては一層、通用しなくなる。今後は、「顧客が最良の商品を買うのを手伝う」ことが可能な「真に顧客中心の精神を持った企業」にこそ、消費者の支持が集まる。
・第47の変化 「ブログ・ウォッチング」が極めて重要なビジネス手法になる。
無数の個人が開設する「ブログ」がトラックバックやコメント、リンクなどで結びついて生まれるブログの影響圏「ブロゴスフィア」が発生しつつある。これは、ホームページとは違って「目に見えない顧客コミュニティ」であるが、情報がブログによる口コミで縦横無尽に行き交うことで、市場に対する影響力を持ち出すことになる。
こうした状況が起こると考えれば、企業が自社製品や自社サービスに関連する「ニーズ」や「評判」「意見」といった声に耳を傾けること、つまり「ブログ・ウォッチング」が極めて重要なビジネス手法となる。
ブログは、企業が実施するアンケートとは違い、「より率直な意見」が聞けること、また、ブログのメッセージからコンテキストにかかわる情報も入手できることから、立体的な顧客の姿を掴める可能性がある。
・第75の変化 そして「日本の時代」が始まる ←これが著者の最も言いたかったメッセージでしょう。
「WEB2.0革命」によって、経済活動が極限にまで合理化、効率化され、世界全体が一つの市場となり、無数の消費者が結びつく。しかし、この発展もヘーゲルの弁証法における「事物の螺旋的発展の法則」に則るものであり、価値観は日本がかつて持っていた「右手に算盤、左手に論語」(渋沢栄一の思想)、「三方、良し」(近江商人の心得)、「浮利を追わず」(住友家家訓)など、世界が学ぶべき価値観へと回帰する。
「WEB2.0革命」の時代は、日本が日本という国の素晴らしさを再発見する時代でもあるだろう。
この素晴らしい予言を現実にすべく行動を起こすのは、我々日本人一人ひとりです。私自身もその一端を担うべく精進します。