本書は、19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍した米国のコピーライターであるクロード・C・ホプキンス氏の著作で、原著は1923年に執筆されたものです。
本書では、タイトルの通り、広告マーケティングの21の原則が示されています。商品の数も少なく新聞や雑誌が広告メディアの中心であった当時と、テレビやインターネットなどの新しいメディアが主な広告メディアとして登場した現在とでは、その状況は違いますが「原則」のタイトルのとおり、今でも通用する内容です。
以前、「ある広告人の告白」を書籍レビューでとりあげた現代広告の父デイビッド・オグリビー氏や、「ハイパワーマーケティング」の著者で現在、米国のトップマーケターであるジェイ・エイブラハム氏も、著者ホプキンス氏に対して最大の賛辞を寄せています。
ホプキンス氏は、本書の中で一貫して、「広告はセールスマンシップである」と主張しています。原則第2章で詳細に記されていますが、「広告の目的は商品を売ることであり、それ以外にはない。広告の採算性は実際の売上高に基づいて判断しなければならない。広告はばくぜんとした印象を与えるためのものでも、社名を誇示するためのものでもない。セールスマンを支援することですら、第一の目的ではない」とのメッセージを発しています。最近では、企業のイメージ広告や製品のリマインド広告など「売る」ことだけが目的ではない広告もありますが、自社の広告の一つひとつの意義や目的について、事前によく考え、実施後は費用対効果について、常に検証する姿勢が必要であることを再認識させてくれます。
さて、医薬品マーケティングは規制や、製品特性、流通上の制約などが多いため、消費財などの広告手法がそのまま適応できません。そのことが、「業界の特殊性」という一言で片付けられ、他業界のマーケティング手法を取り入れることのできる「考え方」、「コンセプト」ですら阻んでいる場合さえあるのではないかと感じています。本書は、古典であっても「原則」を示した書籍であり、それを通じて、どのように自社の業界の中で原則を適用するかを考えることも重要ではないでしょうか。
21の原則のタイトルと、刺さったメッセージを記します。
広告の文章は、セールスマンの話と同じように簡潔で、明瞭で説得力のあるものでなければならない。
全ての人間がそうであるように、広告の読み手も自己中心的であることを忘れてはならない。消費者は説得されることはあっても追い立てられることはない。消費者は自分のしたいように行動する。こうした事実を忘れなければ、広告の失敗は大幅に減るだろう。
読む価値のある情報を提供し、それを見出しで示さない限り、人々が広告主の主張に耳を傾けることはない。
同じ商品でも、提示の方法が違えば、反応には何倍もの開きが出る。広告に携わる者は過去の事例を探り、何らかの方法で最善の方法を見つけ出さなければならない。
原則1 「広告の原則の誕生」
原則2 「セールスマンシップ」
原則3 「サービスの提供」
原則4 「通販広告の教訓」
原則5 「見出し」
原則6 「人間の心理」
原則7 「具体的であること」
原則8 「商品を語りつくす」
原則9 「イラスト」
原則10 「高くつくアイデア」
原則11 「情報の重要性」
原則12 「戦略」
原則13 「サンプルの使用」
原則14 「流通の確保」
原則15 「テストキャンペーン」
原則16 「販売店との関係」
原則17 「個性」
原則18 「ネガティブ広告」
原則19 「ダイレクトメール」
原則20 「商品名」
原則21 「健全なビジネス」