「MRのための営業心理学」 佐藤 龍太郎

MRの仕事を楽しんでいますか?顧客である医師とのコミュニケーションはうまくいっていますか?また、同僚や上司との関係は順調ですか?
答えが、全て「Yes」なら、そうこの本を読む必要はありません。もし、一つでも「No」があるならこの本を読む価値はあるでしょう。

本書は、『Monthlyミクス』の連載で読者から絶大な支持を受けた「MRのための営業心理学」(05年12月~07年1月まで掲載)をまとめて単行本として出版したもので、最近ビジネスでも応用されているNLP(Neuro-Linguistic Programming=神経言語プログラミング)という心理学をベースに営業を中心としたMR活動をより生き生きとしたものにするための実践的な考え方や方法論が、15項目に亘って解説されています。

「NLP?」「心理学?」といわれると難しそうなイメージがあるかもしれませんが、本書では難解な表現や学問的な解説ではなく、営業現場で使えるように具体的な内容です。また、章ごとに「まとめ」や「エクササイズ」があり、読みながら「実践」することができます。

以下に各章のタイトルとその中で最も印象的なポイントやメッセージを紹介します。

1.営業力の本質
営業力の本質とは顧客に無条件で買っていただける最高の人間性を目指し続けることなのです。

2.反論、断りの心理
反論は、「買ってあげたいから、もっと納得できる理由を示してよ」という催促にすぎません。それを実現するために、思うべきことは顧客の成功であり、製品を通して顧客は何をうまく解決したがっているかをつかむことです。

3.営業活動が最高のビジネス・トレーニング
ささいなことでも自分なりにうまくできた場合は、すぐに自分をほめてやることです。それは自分を認めることであり、確実にプラスのエネルギーが充填されます。

4.ボス・マネジメントというスキル
より効果的にボス・マネジメントするには、上司の行動を先読みして絶えず先手を取るようにすることです。これは、顧客に対して行うことと同じであり、上司のミッション、ニーズ、ウオンツを理解し、対応することができる部下のフォロワーシップです。

5.脳の情報処理パターン
メラビアンの法則のとおり、ボディーランゲージ、声の調子といった顧客が無意識に感じ取っている非言語メッセージは、言葉よりも雄弁です。営業パーソンと顧客との言語、非言語のコミュニケーションのキャッチボールが、フィードバック・ループを形成して、お互いの言動に影響を与えます。

6.顧客の「無意識」に好かれる方法
人には優先的に使用する感覚があり、視覚優先タイプ、聴覚優先タイプ、体感覚優先タイプの3つに分かれます。顧客が優先している感覚にあった説明の仕方や、ピンときやすい言葉を用いると、納得してもらいやすくなります。

7.顧客の世界観へのマッチング
顧客との最高のコミュニケーションは、世界観、価値観がつまった「顧客の言葉」で語ることです。これはマーケティング戦略でも同様で、製品が「自分に合っている」、つまり顧客の世界感にフィットしていると思ってもらえるストーリーが重要です。

8.訪問回数より心の距離
親しみやすさに最も大きな影響を与えているのが、顧客の感情に対する配慮です。感情は思考や行動に重大な影響を与えています。顧客に親しみを感じてもらうには、まず顧客の感情に敏感になることです。

9.つかみの心理とシナリオ
営業パーソンの自信は知識と経験から生まれます。ここで言う知識とは製品知識だけでなく、製品関連・周辺の様々な知識を言います。できる営業パーソンは、つかみで意外性を演出しながら、絶えずシナリオのブラッシュアップを図っているのです。また、シナリオには予想される不審対策や疑念対策を最初から盛り込んでおけばよい。

10.営業の成功イメージと見えるグラフ化
脳は、想像したことと現実を区別できません。したがって、面談前にうまくいく情景をイメージすることは、良い結果をもたらすためのトレーニングとして有効です。

11.仮説思考と分析のスキル
手元にある少ないデータや情報から、いかに全体像をイメージし、限られた時間の中でどれだけ正解に近い答えを考え出せるか、そして、その結論を速やかに実行に移せるかが、成功するビジネスパーソンの鍵なのです。

12.クロージングしないで自己説得してもらう方法
知識が豊富な顧客(医師)は、MRの言葉よりも自分の知識と体験を重視します。また、医師は知識水準が高く、自己矛盾を嫌い、自分の言った内容に一貫性を保とうとします。コーチングは、「説得する」のではなく、医師自身に「自己説得」してもらえる方法として試してみる価値があります。

13.自分というブランドの作り方
顧客の頭の中に、自分をどうイメージしてもらい、どのようにアプローチし、どう喜んでもらえるかを考えることが自分というブランドを作りです。目的意識を持って、他社MRにない自分の特別な強みを作り上げることをやり続けることで、顧客にもその違いが認識されるようになります。違いが認識され始めるということは、ブランドが確立され始めてきているという証です。

14.どんなときでも最高の自分でいる方法
失敗しがちな人と成功しがちな人の思考経路の違いがあります。失敗しがちな人は、外部に原因を求める「批判者」の思考をとりがちで、成功しがちな人は「学習者」として、起こったことから建設的に学ぼうとする傾向にあります。
出来事は、選べませんが、それに対する解釈、態度は選べます。仕事や人生の質は、自分に対する質問の質で決まります。

15.自分の限界を破り、素早く変化する方法
人間の脳は、明確なイメージがなければ「できない」「無理だ」とか、勝手なことを言いますが、「こうなりたい」とイメージを鮮明にすれば、脳が勝手に働きだしてくれるのです。
また、ポジティブな感情を持つには、自分自身の脳とのコミュニケーションで、自分の長所を強調してやる必要があります。さらに、一瞬で自分の感情を変える方法として、ネガティブな言葉を、反対の視点でとらえてポジティブな言葉で言い換える「リフレーミング」をお勧めします。

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