いまや、多くの疾患で作成されている「診療ガイドライン」。医薬品マーケティングを考える上でも、この「診療ガイドライン」は、製品ポジショニングやマーケティングコミュニケーション戦略、戦術に大きな影響を与えることはご存知のとおりです。
本書は、日本呼吸器学会の「呼吸器感染症に関するガイドライン」ができるまで、そして改訂に関する取り組みを、作成委員長であった著者が、ふりかえって紹介するガイドラインのメイキングストーリーです。
本書の著者である松島敏春先生他本書にご登場される「ガイドライン作成委員」の先生方は、呼吸器領域を中心とする感染症の専門家であり、ほぼ全員にお仕事を通して、ご監修いただいたり、講演会等でお世話になったりしたことのある先生が大半で、個人的にも大変興味深く読むことが出来ました。また、本書に紹介されていた「市中肺炎ガイドラインについての国際カンファレンス」は、企画・準備・運営のお手伝いをさせていただいた仕事であり、読んでいて当時のことを懐かしく思い出すこともできました。
さて、製薬メーカーの皆さん、特に感染症治療薬に携わるプロダクトマネジャーにとっては、ガイドラインのメイキングストーリーを伺いしることは興味深いのではないでしょうか?
本書では、ガイドラインを策定するに際して、その必要性の検討、各国のガイドラインの調査や評価に始まり、最も重要である「ガイドライン作成の理念」から実際の詳細を検討され、策定されていくまでのプロセスが、ある意味、「泥臭いヒューマンドラマ」のごとく進んでいくさまが読み取れます。また、医学は科学であり、「ガイドライン」もエビデンスに基づくことが重要であることは論を待ちません。しかし、その前に「理念」や「哲学」がしっかり、根を下ろしていることが重要であることを気づかされる物語です。
最後に、本ガイドラインの作成に携わられた「ガイドライン作成委員会」の先生方にあらためて、敬意を表すとともに、本ガイドラインの普及・発展を通じて、健康増進に寄与することを期待、祈念します。