本書は、病院に対して医療経営コンサルティングを行っている著者達が、経営コンサルティングファームであるマッキンゼー流の経営手法を病院経営において直面する問題に適応し、その解決のためのフレームワークや考え方、具体的なケース、著者の病院経営支援への熱い想いを示した書籍です。また、本書の対象は、病院経営を行う医師や経営者向けですが、ビジネスマンにとっても、スキルの修得の必要性が高いロジカルシンキングや問題解決のフレームワークを活用したケースを記されているので、問題解決のための考え方や具体的なアプローチ法を学ぶことができます。
第1章では、「問題解決とは何か?」について記されていますが、ここでの考え方は、病院経営に限らず、あらゆるビジネスにも適応できます。この章における著者の考え方の大枠は次のとおりです。
問題を表面的に捉えるのではなく、なぜその問題が生じているのかという問題発生のメカニズム(構造)をしっかり理解することが重要である。そして、構造化された問題の中から本当に重要な問題を絞りこみ、解決すべき課題として認識すること、最終的にアクションにつながる解決策をたてることが重要である。
第2章では、問題解決を行うための思考方法や手法について解説されています。問題解決を支える3つの考え方として「ゼロベース思考」「仮説思考」「論理思考」が、また、問題解決を支えるツールとして「MECE(ミーシー)」「論理ツリー」「問題解決シート」が解説されています。これらの考え方や手法はどんな問題解決の場面にも有効に使えるので、是非身に着けておきたいものです。
第3章では、「病院経営」における「問題発見」「在院日数削減」「(患者)集客」「業務効率化」「品質改善」「組織」にそれぞれについて、いくつかの問題発見・解決のフレームワークを活用しながら、本書にタイトルのとおり「科学」されています。こうしたフレームワークを使って、分析することで、問題の目に見える形にできること、また関係者が共有化できることが、ケースを読みながら実感できます。
そして、最終章(エピローグ)では、著者らの「病院経営の科学」の実践を通じて得た「想い」や理想である「PHC=プロフェッショナル・ホスピタル・コンセプト」の考え方について触れられています。この考え方が実現すれば、それは患者にとっても、価値の高い医療が提供できるように思います。