- 今回は「Digg」に代表される「ソーシャルニュース」について説明いたします。
「ソーシャルニュース」は、まだ新しいサービスですが、「Web 2.0」の特徴を多く兼ね備えていますので、今後、多くの人が利用すると考えられているサービスです。「ニュースサイト」といえば、「あらたにす」や「Yahoo!news」といったマスコミが運営しているウェブサイトや、Yahoo!が各マスコミと提携してニュースを配信している「Yahoo! News」などを思い浮かべるのではないでしょうか?あらたにす(読売新聞、朝日新聞、日経新聞が提携したニュース配信サイト)ご存知のとおり、こうした「ニュースサイト」は、各社の記者が取材を行い、作成した記事を配信しています。プロの記者の記事ですから、媒体がインターネットに変わっても、記事の内容や論調は、従来の新聞や雑誌と殆ど同じです。
一方、最近ではブログの流行に代表されるように、誰もが情報発信をする時代になると、一般のユーザや素人の記者が日常の些細な出来事から、自身が体験した社会的事件まで、多くの情報を発信するようになってきました。
こうしたプロではない一般の生活者が発信したニュースを専門に集めたウェブサイトが「ソーシャルニュース」サイトと呼ばれるウェブサイトです。(「ソーシャルニュース」では、記者を「市民記者」と呼んでいます)それでは、この「ソーシャルニュース」がメディアとしてあるいは広告媒体として、注目を集めている理由は何でしょうか?
ただ単に、数多くの「素人の記事」が読める、というだけなら、それほど注目を集めることにならかったでしょう。「ソーシャルニュース」サイトの人気には、ある「しかけ」があります。
冒頭に紹介した「Digg」がアメリカでサービスを開始したときに、「市民記者」が投稿した記事に、読者が簡単に評価することができる仕組みを追加したのです。
Diggのウェブサイトを見ていただければわかるかと思いますが、それぞれの記事の横に「205 diggs」といった表示がされています。
これが読者の評価で、その記事を読んで「面白い/役に立った」と感じた読者は、ボタンをクリックするだけで、その記事を評価することができるのです。つまり「Digg」を訪れたユーザは、いま、アクセスした人たちが評価した、つまり人気のある記事やニュースを、一目で知ることができる、というわけです。
また、新聞などのマスコミでは、どの新聞の論調もよく似た視点ですが、「ソーシャルニュース」サイトでは、市民記者が自由な視点で論調を展開することが多く、「面白い」視点の多数の記事を一つのウェブサイトで読めることになります。
もちろん、記事のレベルは玉石混交でレベルの低い記事も多く集まってきますが、「Digg」では、評価の高い「市民記者」に、「Digg」の広告収入の一部を分配するなどインセンティブを提供することで、記事の質を向上に取り組んでいます。
その結果、元新聞記者やテレビのレポーターといった専門記者も多く投稿し、掲載される記事の信憑性も高くなっているのです。
そして、今ではアメリカでは多くのユーザが「Digg」を利用し、一部には新聞よりも信用できる、との評価もあるようです。同様のサービスが日本でも「ニューシング」といったサイトで提供されており、今後は日本でもこうした「ソーシャルニュース」サイトが人気を得ていく可能性も高そうです。
では、こうした「ソーシャルニュース」の考え方を、どのように医薬品マーケティングに応用できるか、考えてみたいと思います。
当社では、今回の「ソーシャルニュース」だけでなく、今後のウェブマーケティングを考えるキーワードは、「双方向性」「コミュニティ」「自浄作用」ではないかと考えています。
例えば、医療・医薬系のウェブサイト利用者である医療従事者(=会員)に、「ソーシャルニュース」として発信する場を提供することで、より専門家からの意見や考えを集めることが可能です。
現在の製薬企業のウェブの情報提供は、その領域の専門医の監修記事やコメントのある情報を掲載した「情報発信」に限定されているケースが殆どです。
しかし、そのコンテンツに対して、肯定的な意見、否定的などちらが閲覧者の評価を集めたかを知る仕組みを機能させれば、そのコンテンツに対する医師の反応を把握することができ、今後の情報提供のあり方などを考える材料になります。
さらには、反論や否定的な記事を投稿できる場を作り、議論を活発化させることで、医療や治療上、より意義あるレベルへ止揚することもありうるのでなないでしょうか?ウェブサイト利用者の集合知を活用できる「ソーシャルニュース」サイトは、医薬品マーケティングのウェブサイトのように、専門情報を持ったユーザが多く集まるウェブサイトに向いたサービスだと言えるでしょう。
このように情報発信者とその情報閲覧者の区別がどんどん無くなり、相互に情報を交換するウェブサイトが、今後多くの利用者を集めると考えられていますが、医薬品マーケティングのウェブサイトにおいても、そうした「Web 2.0」的なサービスの提供を検討されてはいかがでしょうか?