今回はDTCマーケティングで知っておきたい通販と共通の指標について考えてみたいと思います。
その前に、なぜDTCマーケティングと通販が関係あるのかについて説明します。DTCマーケティングで、疾患認知から受診までのフローは
1)病名を知らない、病識が無い人に病気を認知してもらう
2)その病気の可能性がある人に、より興味をもってもらい深い理解や事前の罹患の可能性をチェックしてもらう
3)そして、その可能性が高いとなると、受診して診断してもらうことです。
その後は、最終的に薬物治療が必要か、どの薬剤を選ぶかは、医師が決めることになるので、自社製品の処方は、DTCマーケティングよりも、対医療者向けのマーケティングやディテールによることの影響が大きくなります。
そのため、DTCマーケティングだけで医薬品マーケティング全体が機能するわけではありませんが、当該疾患での処方薬が少なく、市場シェアが高い場合などは、DTCマーケティングが持つ製品処方への影響は大きくなります。
それでは、1)~3)のプロセスと指標を考えます。
まず、1)の疾患啓発の場合では、マスメディア、ウェブによる広告や折り込み広告などから、疾患小冊子の申し込み、自社のウェブサイトやコールセンターへのアクセスを誘導します。
通販ならサンプル提供をオファーするプロセスにあたります。通販の場合、広告の費用をサンプル請求件数で割って、CPA=Cost PerAquisition と呼びます。
DTCマーケティングにおいても、この最初のステップへの費用対効果を測定する指標としてCPAをそのまま活用することが可能です。
例えば、新聞広告で100万円使って、自社への疾患小冊子の申し込みが、100名あったとすれば、CPAは1万円となります。
2)については、一度、自社ウェブサイトを来訪した方に、チェックシートで疾患チェックをしてもらったり、地域別に疾患を治療してもらえる施設を紹介するなど、受診をサポートする情報を提供します。そして、そこで受診が必要だと感じた方は、3)にプロセスへと進みます。
ここで受診した患者さんの数は、医療機関とも協力し、新規の患者さんの受診理由を聞く仕組みを用意するなどの工夫が必要ですが、それが可能であれば、把握することができます。
通販の場合なら、サンプルから本製品への移行プロセスがこれにあたり、広告の費用を本製品受注数で割ってCPO=Cost Per Orderと呼びます。通販は、サンプル提供で個人情報が把握できるため、容易にCPOが計算できますが、DTCマーケティングの場合はここの工夫が必要です。
さきほど示したとおり、受診患者数の把握も工夫が必要ですし、もう1つ、自社製品が処方されたかどうかについては、医師に直接、確認することが必要になります。
ただ、予め施策を実施することを医療機関や医師に伝え、MRが協力することで、自社製品が処方された患者さんの人数は、ある程度把握できるでしょう。
ここでの指標ですが、通販ではCPOだけですが、DTCマーケティングでは、
CPVD = Cost Per Visiting Doctors
CPPD = Cost Per Prescribing Drugs
などのように分けて考えても良いと思います。
かりに、先ほどの100名のうち、50名が受診し、20名が自社製品の処方だとすれば
CPVDは、100万円を50名で割って2万円
CPPDは、100万円を20名で割って5万円
となります。
このように、通販のマーケティングとDTCマーケティングは、その構造やプロセスが似ているため、共通で使える指標があります。
個人的には、現在、通販で行われているマーケティングの方法論が、今後DTCマーケティングでも汎用されるようになると思っています。
次回は新たに2つの指標と、今回説明した指標の解釈やDTCや意思決定のポイントなどについて触れて見たいと思います。