今回は「フォークソノミー」、そしてその「フォークソノミー」を代表するウェブサイトである「Flickr(フリッカー)」を紹介します。
「フォークソノミー」とはfolks(民衆)とtaxonomy(分類法)を合わせた造語で、ここ2週に亘って紹介した「ソーシャル」と同じく、集合知を集める仕組みのひとつです。
一般的なウェブサイトでは、運営者の考えで、情報を分類してカテゴリーを決めたり、ディレクトリーを作成しますが、「フォークソノミー」では、インターネット上の情報に、利用者が「タグ」と言われる情報を追加することで情報を自由に分類することができます。
どのようなものかをご理解いただくために、「フォークソノミー」の代表的なウェブサイト、「Flickr」を見ていただきましょう。
「Flickr」はキャッチフレーズ「Share your photos. Watch the world.」の通り、写真共有サイトと呼ばれるウェブサイトで、利用者がアップロードした写真が自由に閲覧できるもので、一日の利用者が300万人にも達しっています。
写真を共有するだけのウェブサイトが、なぜこれほど人気があるのでしょうか?
「Flickr」には、1ヶ月に200万枚以上の写真がアップされており、その写真の提供者は、「タグ」と呼ばれる情報を追加して写真を公開する仕組みになっています。
例えば「金閣寺」の写真をアップするなら、「お寺」「京都」など、キーワードとなるようにいろいろな「タグ」をつけることができます。
利用者が、「お寺」の写真が見たい場合は、「お寺」と入力して検索することで、そに「タグ」がついた金閣寺の写真を見ることができます。
また、写真の閲覧者は、自由に「タグ」をつけることができます金閣寺の写真であれば「日本の観光地」や「世界遺産」といった情報を追加することができます。
その結果、その後に「Flickr」にアクセスした人が「世界遺産」というキーワードで検索すれば、金閣寺の写真を見ることができるようになるのです。
このように、写真の提供者だけでなく、閲覧者が見る側にとって便利であろうと考える「タグ」を付加できるために、多くの人が考えた情報=「集合知」が「Flickr」に集まります。
このように閲覧者も積極的にかつ気軽に参加できる仕組みを用意したことで、「Flickr」は人気のウェブサイトとなったのです。
この仕組みが「フォークソノミー」と呼ばれ、「Flickr」はその代表的な成功例です。
「Flickr」は写真に「タグ=情報」を追加するウェブサイトですが、他にもコンテンツに「タグ」を追加する「はてな」や、動画に「タグ」を追加する「ニコニコ動画」など、様々な情報・コンテンツに「タグ」を追加する「フォークソノミー」のウェブサイトが、人気になっています。
では、この「フォークソノミー」をどのように医薬品マーケティングのウェブサイトで活用できるでしょうか?
製薬企業が提供するウェブサイトに掲載されているコンテンツは、当然のことながら、コンテンツを掲載する側である製薬企業によって整理・分類されています。
「医療従事者向け情報」、「患者様向け情報」、「ニュースリリース」といった分類や「専門医向け」「プライマリケア医向け」といった切り口もあります。
こうした分類の多くは、「提供者の論理」あるい「提供者の仮説」ですから、利用者である医師からみた場合には、必ずしも適切でないケースもあります。
こうした分類を、医師や医療従事者による「フォークソノミー」によっておこなってもらうことで、一層、しっくりくる分類ができる可能性があります。
例えば、「プライマリケア医向け」とあっても、「若手専門医向けにも適応可能」などの「タグ」がつけられることで、若手の専門医にも情報を見ていただけるようになります。
その分類は、提供者が制限できないため、必ずしも提供者の意図した分類とは違ったものになってしまうかも知れませんが、多くの利用者が分類を繰り返すことで、「利用者にとってわかりやすい分類」によって、「使いやすい・情報を探しやすい」ウェブサイトとなる可能性があります。
「ソーシャル」や「フォーク」といった、多くの利用者の知恵や情報を集める仕組みをウェブサイトに組み込むことで、より利用者にとって便利なウェブに育成し、ロイヤリティを向上させる仕組みが、ウェブサイトを活用したマーケティングに求められる時代になりつつあります。
医薬品マーケティングにおいても、こうした集合知を利用できる仕組みを取り入れていくことが大切ではないでしょうか。