さて、今回はジオマーケティングについて。
地域の特性を考慮したエリアマーケティングや地理的マーケティングは、古くからある概念で、実際、実行されてきました。
しかし、時代とともにインターネットを使った情報提供やECの発展、文化の同質化などで意義が小さくなっていました。
ところが、ビッグデータやIoTの時代になって、再び注目を浴びるようになってきたのです。
それが、「ジオマーケティング」です。
意味としては、エリアマーケティングや地理的マーケティングと同じですが、実行のために使うツールや方法が、かつてとは大きく異なることから、それを明確にするためにジオマーケティングと呼ばれているようです。
ジオマーケティングの再評価の大きな要素は、スマートフォンの普及です。
位置情報を使うことで、消費者と企業や店舗とのコミュニケーションが簡単になりました。
例えば、飲食店が会員登録している顧客が近隣にいることを確認できれば、キャンペーン情報などをLINEやメールで送ることができます。
こうしたジオマーケティングの活用が加速する理由は、大きく2つあります。
1つは、環境的要素です。
スマートフォンの普及と相まって、地図データ、統計データなどの位置情報と消費者の活動位置が簡単に入手できることです。
顧客や会員の位置情報をモニタリングしておけば、良いタイミングで位置情報をトリガーにしたキャンペーンなどの配信が可能です。
もう1つは差別化です。
ECが進化したことで、「場」の重要性が相対的に低下しています。
そんな中で、リアルの店舗を運営する小売業やショッピングセンターでは、ECや通信販売との差別化のため、「地理的」個性を重視したマーケティングに
注力し始めたのです。
これは、町づくり、観光分野でも応用されるつつあるようです。
さらに最近では、AI技術を用いた先進的なジオマーケティングの試みも進んでいるようです。
さて、医薬品マーケティングでは今のところジオマーケティングが話題になることはありません。
しかし、将来、患者を含めパーソナルヘルスデータがスマートフォン経由でクラウドなどに登録されることになれば、医療分野でも役立ちそうです。
もしなんらかの慢性疾患や持病を持つ患者さんが旅行や出張に行く場合、現地で何かあった場合に受け入れてもらえる病院の情報を予め知っておけば、不安が少なくなります。
各地域の病院間の連携と患者さんの位置情報、パーソナルヘルスデータがあれば、いざという時の治療も簡単になります。
また、情報の公開についての問題はつきまといますが、パーソナルヘルスデータと位置情報が結びつけば、どのエリアで患者さんが多いか、あるいは増えるかなどの情報も入手可能になります。
そうすれば製薬企業が注力すべきエリアもわかります。
このようにジオマーケティングは、将来的には医薬品マーケティングでも活用できる可能性がありそうです。
それにしても、スマートフォン、AI、ビッグデータ、IoTはどんどんマーケティングのあり方を変えていきますね。
このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。