さて、今回は「クレショフ効果」を取り上げます。
クレショフ効果とは、1つの画像や写真が、その前後に組み合わされた他の映像や画像によって、「意味付け」に影響を及ぼす効果です。ロシアの映画監督であるレフ・ウラジミロヴィチ・クレショフが行った実験からその名が付けられました。
その実験は次のようなものです。まず、クレショフはロシアの俳優(イワン・モジューヒン)の無表情なカットを素材として選びました。
そして、そのカットの前に
1)スープの皿のクローズアップの映像
2)棺の中の遺体の映像
3)ソファに横たわる女性の映像
を観客(被験者)に見せました。
観客はこれらを見た後に、俳優があらわす感情について答えることになっていました。その結果、
1)では、「空腹」
2)では、「悲しみ」
3)では、「欲望」
を感じたのです。
この結果は、俳優の「感情」を想像する際に、前の映像のイメージが影響を与えたことを物語っています。逆に言えば、多くの人は前後のつながりを無意識に関連づけて「意味」を理解しようとするのです。
この効果は映画理論の基本ですが、営業や医薬品マーケティングでも応用可能です。たとえば、MRが自分のにこやかな似顔絵や写真の入った名刺を配り、「いつも笑顔の●●さん」といった印象を与えることも、この効果を応用する方法の1つです。
また、医薬品マーケティングでは、ウェブで動画を配信するケースも増えています。その際、使う素材や編集のあり方も、クレショフ効果を意識しておくことで、その目的に達するレベルも変わりそうです。つまり、視聴者に受け取ってもらいたいイメージを持つ素材を有効に使うことで、より効果的な動画制作が可能になると考えられます。
医薬品マーケティングにおいても、活用するメディアや手段が多岐にわたる昨今、マーケティング理論もITや心理学など広い範囲の知識や知恵が求められる時代になってきました。常に新しい知識をインプットしつつ、スキルとして身につけることが大切ではないでしょうか。