さて、2020年の第1回目は「サービス・ドミナント・ロジック」がテーマです。
サービス・ドミナント・ロジックとは「モノ」と「サービス」を統合して捉え、企業と顧客が共に価値を創造していくという視点から企業活動やマーケティングを考えて構成しようとする概念です。
スティーブン・バーゴ&ロバート・ラッシュの二人が、2004年に『Journal of Marketing』に掲載した論文「Evolving to a New Dominant Logic for Marketing」で初めて登場した言葉で「SDL」とも表記されます。
この用語自体は、最近、よく耳にするようになりましたが、概念としては古くからあったものです。
1969年に発表されたセオドア・レビットの論文「The marketing mode: pathways to corporate growth」で紹介された「顧客はドリルが欲しいのではなく、ねじ穴が欲しいのだ」と相通じるものです。
これは、顧客が「モノ」を欲しているのではなく、モノによって得られる「便益」を欲していることを伝えようとした言葉です。
この言葉は、50年以上も前から今に至るまで伝わる有名なマーケティングの格言ですが、当時も今も「顧客が求めるのは便益」である点は常に同じです。
ただし、当時は今ほどモノやサービスが溢れかえっていなかったので、モノが主導でも通用した時代でした。
しかし、今では「モノ」の製造や販売だけでは、顧客に十分な価値を与えることができなくなってきました。
そんな背景の中、「サービス・ドミナント・ロジック」という概念に注目が集まっているのです。
サービス・ドミナント・ロジックの概念は、対局である「グッズ・ドミナント・ロジック」と合わせて考えると理解し易くなります。
グッズ・ドミナント・ロジックでは、「モノ」と「サービス」をそれぞれ個別のものとして考えます。
そして、企業は顧客にそれぞれを提供することで、対価(お金)と交換するという考え方です。
一方、サービス・ドミナント・ロジックでは、「モノ」と「サービス」を統合して捉えます。
企業が提供する価値は、モノがサービスに内包された使用価値または体験価値であり、それが企業と顧客の共創によって生まれます。
サービス・ドミナント・ロジックの概念は、製薬企業や医薬品マーケティングでも応用しやすい考え方です。
医薬品自体は「モノ」ですが、得たいものはそれを使った「予防効果」や「治療効果」です。
しかし、それは医師による適切な使用があってこそ得られるものであり、また、個別の症例だけではなくさまざまな症例データの集積があってこそ広がりを見せます。
つまり、成果は顧客である医療者や患者さんとの共創で得られるものです。また、データが増えれば増えるほど価値は高まります。
そう考えると、サービス・ドミナント・ロジックは医薬品マーケティングでこそ大切にすべき概念ではないでしょうか?
このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。