さて、今回のテーマは、「O3(オーゾーン)」です。
O3(オーゾーン)は、マーケティングの神様フィリップ・コトラー博士が、
自著「コトラーのマーケティグ4.0」で提唱しているコンセプトです。
このコンセプトは、医薬品マーケティングでも応用できると思います。
コトラー博士は、マーケティングの究極の目標を、
製品の「認知」から「購入」を超えて「推奨」まで進ませることだとしています。
そのための影響力が、
・Outer(外的影響)
・Others(他者)
・Own(自分自身)
の3つとしています。
この3つの頭文字をとって、「O3(オーゾーン)」と名付けられました。
外的影響とは、企業から意図的に発信される
広告などのマーケティング・コミュニケーションです。
また、営業マンの活動、製薬企業ならMRの活動の影響もその1つです。
他者とは、友人や家族ほか自分の周りのコミュニティです。
医療者の場合なら、先輩医師、友人医師、KOL、学会や医師会です。
また、メドピアなどのSNSの情報も他の医師の影響の1つです。
最近では、こうした医療専門SNSの影響が大きくなっています。
自分自身とは、その製品やサービス、
企業に対する信頼性、使用経験などによる影響です。
自分で意識しなくても、消費者はどんな商品やサービスでも、
この3つの影響を受けて製品の使用や継続を決めます。
医師も医薬品の採用、処方を決める場合には、3つの影響力を受けていますね。
このことは、感覚的にもわかりやすいのですが、
マーケティングを考える上でのポイントは
●人(医師)によって、3つの影響力を受ける比率はバラバラ
●認知から採用、処方継続、推薦までのプロセスでも影響力を受ける比率が変わる
ことです。
例えば、製品やサービスの「認知」段階は、「外的影響」の力が大きくなります。
製品を新発売する場合などは、当然、企業が広告を発信しますから、
広告が大きな影響を与えます。
採用の段階なら、自分の専門分野の薬剤なら「自分自身」の影響が大きいでしょうし、専門外なら「他者」の影響が強くなります。
このように、オーゾーンは製品の採用プロセスや医師の考え方と組み合わせることで、医薬品マーケティングを考える上で役立ちます。
例えば、次のようなことがあります。
医師の中でイノベーター的な医師やアーリーアダプター的な医師は、
おおむね「自分自身」で採用するかどうか決めます。
だから、企業側のメッセージを伝えるより、
興味のありそうな文献情報を提供することが有効です。
また、採用後は症例に対する効果や副作用について
しっかり情報交換することなども大切です。
このサポートによって、医師は自分の中で治療の経験値を高めるからです。
また、アーリーマジョリティは他者(KOL)の影響を受けやすいので、
講演会やウェブセミナーなどが良い方法になります。
これは一例ですが、医師のイノベーター度、採用プロセスで、
どの影響力を使うことが良いかを考えれば、
医薬品マーケティングのコミュニケーション戦略の立案や見直しに
役立つのではないでしょうか。
このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。