医薬品マーケティングにおけるオムニチャネルを考える-Part4

さて、今週も医薬品マーケティングのオムニチャネルを取り上げます。
今回がこのテーマの最終回となりますが、全体としてどんなプロセスで取り組むべきかについて考えてみます。

そもそもオムニチャネル化のゴールですが、これは医師とのコミュニケーション接点を最適化することで、Life Time Value、つまり、1人の医師が「医師」として働く期間に自社製品を処方する総額を高めることです。

その実現に向けての最初の一歩が、医師の情報入手プロセスの見直しです。

その情報をもとに、コミュニケーションデザインの最適化の設計が2番目のステップとなります。
どのようなツールやメディアを使って、どのようなタイミングで情報を提供するかについての設計です。

システム開発やIT投資の前に、この2つのステップが極めて重要なプロセスとなります。

それ以降のステップも、まだまだやるべきことはありそうで、

・ウェブマーケティング等デジタルによるコミュニケーションから得られる医師情報と、MR活動から入手するものの一元化

・担当医師のウェブマーケティングによるアクセスやコンテンツ閲覧などの活用状況をMRが閲覧できる仕組み

・MRに対するウェブマーケティングのトレーニング

・MRの活動範囲と評価制度の再設計

・製品別のプロダクトマネジメントとウェブチームなどを融合した組織横断型マーケティング部門の設置

・これらの仕組みが機能するためのプラットフォームの設計と開発

などが考えられます。

これらを見渡せばおわかりのとおり、

ステップ1、2だけでもかなりの時間がかかる
さらにIT投資などに大きなお金とがかかる

ことになりそうです。

また、「医師起点」でコンタクトポイントを整理することから始めれば、従来のマーケティングのパラダイムが大きく変わります。

医薬品業界の長い歴史の中で、過去はアナログな人間関係が中心の顧客志向が強かった時代がありました。
今でも、ルールや規範の範囲では良いことで、続けるべきことでもあります。

しかし、「情報提供」をベースとした関係では、まだ顧客志向が十分とは言えない部分もあると思います。
そのような中で、コミュニケーションのオムニチャネル化は、解決策の一つになりえるのではないでしょうか。

全体を見なおす大きなチャレンジではありますが、是非、検討いただきたいテーマだと思います。