さて、今回のテーマは、「オンラインとオフラインのチャネルをめぐる戦い」です。
本テーマは、日経デジタルマーケティングの2月号に掲載されていた
「チャネルシフト」というとても興味深い方法論、あるいは考え方です。
将来、医薬品業界でも起こり得る可能性があると思います。
チャネルシフトとは、
「オンラインに軸足を置く企業が、顧客とのつながりを生かして
オフラインの顧客機会を奪おうとするチャネル戦略」
と定義されています。
チャネルシフトでは、「商品の選択」と「商品の購入」という
2軸で考えるフレームワークを提供しています。
「商品の選択」は、店舗などで行う「オフライン」と
ウェブサイト上で行う「オンライン」の2軸があります。
「商品の購入」も、店舗などで行う「オフライン」と
ウェブサイト上で行う「オンライン」の2軸があります。
マトリクスで考えれば、4象限に分類されます。
例えば、コンビニなどでは、店舗で商品を選んでその場で買います。
だから、「オフライン」x「オフライン」です。
一方、通信販売では、ウェブ上で商品を選んでその場で買います。
だから、「オンライン」x「オンライン」です。
医療用医薬品の場合は、店舗はありませんが、医療施設で選んで特約店から配送するので、少し変形ですが「オフライン」x「オフライン」です。
ウェブによるコミュニケーションは活発ですが、医薬品の採用の決定への影響力は、アナログのMRの方が大きいでしょう。
さて、最近ではオンライン企業がオフラインに進出を始めたことなどで
「チャネルシフト」に注目が集まっています。
例えば、アパレルでも試着ルームをリアル店舗で作って、
3Dなどの画像で顧客に服を着たイメージ写真を見てもらって
そこで「商品の選択」まで行ってもらう。
そして、購入はスマホで行って商品が翌日に自宅に届くといったモデルがあります。
店舗に来てもらえば、試着とイメージ写真を見てから購入するので
返品リスクが減ります。
店舗に在庫を持たなければスペースもそれほど必要なくコストも抑えられます。
「すぐに服が欲しい!」という方以外は、
顧客もあらかじめシステムを知っておけば不満要因にはなりません。
これは、オンライン企業が「オンライン」X「オンライン」を
「オフライン」x「オンライン」にチャネルシフトした事例です。
他にもアマゾンの事例も有名です。
アマゾンと言えば「オンライン」x「オンライン」の典型的な企業です。
しかし、最近では
●「Amazon Dash Button」というウェブにつながる
リアルな小型デバイスを投入して、顧客の自宅に店舗の役割を持たせる
●「Amazon Books」というリアル書店を開設
そこでは書籍の価格を表示せず別途アプリで価格表示と決済を行う
など、「オフライン」を積極的に取り入れています。
日本でもオムニチャネルという概念が広がり、アナログとデジタルの融合が進みつつありますが、先進企業の事例を参考に様々なチャネルシフトが始まる可能性もありそうです。
もしかしたら、何年か後には、
医薬品業界も医療機関の発注がすべてオンラインになって、
「オフラインxオンライン」へ変わることもあり得そうですね。
このコンテンツが、医薬品マーケティングのアイデアのヒントになれば幸いです。