さて、前回は「コンテクスト・マーケティング」を取り上げましたが、今回はそれを実現できる可能性を考えてみます。
医師が薬剤を選定する際、基本的にはAISETRUS(アイストラス)、つまり
Awareness :認知する
Interest :興味を持つ
Search :情報を収集する
Evaluate :評価する
Trial :試用する
Regular Use :通常に使用する
Share :情報をシェアする
というパターンをたどります。
しかし、プロセスは同じであっても、判断基準が異なるので、同じ情報を入手しても、医師が出す答えはそれぞれ異なります。つまり、薬剤選定にいたる意思決定のプロセスでは、価値観や考え方、性格などが影響し、評価ポイントが違ってくるのです。
たとえば、
製品Aは、安全性が高く、有効性が低い
一方、
製品Bは、逆に安全性が低く、有効性が高い
場合、アグレッシブな性格の医師なら製品Bを選択するでしょうし、パッシブな医師なら製品をAを選択するでしょう。
この例は単純すぎますが、もし、専門領域や所属以外で、医師の薬剤選定の意思決定に与える要素を分析できるとすれば・・・・
そうです。もし、医師の薬剤選定に影響を与える特性を解析し分類できれば、医師の価値観やタイプ別に分けて、それに見合ったコンテンツやメッセージを提供することができます。これが実現できれば、コンテンツマーケティングとコンテクストマーケティングの融合が可能なのです。
そんなことができるのか?その可能性を秘めているのが「Societas(ソシエタス)」です。実は、Societasはマーケティング用語ではなく、シナジーマーケティング株式会社の登録商標です。
Societasとは、顧客の行動データから意思決定の要因を抽出した「タグスコア*」による、まったく新しい顧客セグメンテーションです。いわば「顧客の遺伝子」であり、行動・嗜好の本質を理解するための手掛かりと
なる顧客の分類のことです。
*タグスコア=意思決定の要因を「タグ」として抽出し、スコアリングされたもの。
Societasでは、価値観や行動の要因となる「日本人の特性パターン」が12パターンに分類されます。もちろん、医師であってもこの12パターンのいずれかに分類されるので、性別・年齢・専門領域といったこと以外に、その医師の価値観や特性によって、「なぜその薬剤を選ぶのか」という意思決定の要因に近づくことができます。
他には、
1)特定の領域のKOLに多いSocietasの傾向を見れば、若手のKOL候補の中で、同じSocietasを持つ医師は、KOLとして活躍する可能性が高いのではないか?
2)特定の薬剤を採用した医師が持つSocietasから、未採用の医師の中で、同じSocietasを持つ医師をターゲットすれば良いのではないか?
3)特定の薬剤を支持する医師と支持しない医師のSocietasの違いによる原因があるか?
といった切り口で仮説を立てたり、解析を行うことで、医師の行動の要因を理解する手がかりとして活用できます。
また、Societasを活用すると「How」についてもヒントを得ることができます。
同じ薬剤の特徴のいくつかを訴求した場合に、特性Aに反応した医師と特性Bに反応した医師のSocietasを把握しておけば、特性Aと特性Bを、医師のSocietasによって使い分けることも可能になります。
つまり、どんなタイプの医師に、どのようなメッセージやコンテンツを提供すべきなのか?といったヒントが入手できます。このように、Societasは医薬品マーケティングにおいて、薬剤選定の「Why」とどんなメッセージ、コンテンツを提供するかの「How」のヒントとして、より深く医師をを理解する手助けとなります。
Societasは、シナジーマーケティングの価値観モデルを適用した確率推定モデルです。一部の行動データが存在すればそこから推定するもので、すでにロジックは完成しています。
今後の医薬品マーケティングにおいては、こうしたデータ分析の考え方が不可欠になっていくと思います。すでに、他業界の成功事例もあり、業界内でも実践され成果を挙げている企業もあります。
ぜひ、こうしたコンテクストとコンテンツの融合を実現できる医薬品マーケティングの検討を開始してはいかがでしょうか?